サウンドバーでHDMI端子が足りない時の解決策ガイド
サウンドバーを導入して、プロジェクターやテレビの音響を向上させたいけれど、HDMI端子が足りない問題に直面していませんか。特に、サウンドバー自体にHDMIが1つしかない場合や、テレビのHDMIが2つの場合にどうすれば良いか悩む方は多いようです。失敗や後悔をしないためには、HDMIの入力と出力の違いやHDMI ARCの役割を正しく理解することが大切になります。
この記事では、基本的なHDMIの接続方法から、HDMI分配器(切替器)やHDMIパススルー機能の活用法、さらにはHDMIが2入力ある製品の選び方まで、サウンドバーのHDMI端子が足りないという悩みを解決するための具体的な方法を分かりやすく解説します。
- HDMIの基本(入力・出力・ARC)がわかる
- 端子が足りなくなる具体的な原因を把握できる
- HDMI分配器などを使った解決策が見つかる
- 自分の環境に合った最適な接続方法を選べる
サウンド バーでHDMIが足りない原因と基本知識
この章で解説する項目
- まずはHDMIの入力と出力の違いを理解
- 音声伝送に必須のHDMI ARCとは
- 基本的なサウンドバーのHDMI接続方法
- テレビのHDMIが2つの場合の問題点
- サウンドバーのHDMIが1つしかない時の注意点
まずはHDMIの入力と出力の違いを理解

サウンドバーやテレビの接続を考える上で、最初に理解しておくべきなのはHDMI端子の「入力」と「出力」の違いです。この2つを取り違えると、ケーブルを接続しても映像や音声が全く出ないという事態に陥ります。
簡単に言うと、信号を送り出す側が「出力」で、信号を受け取る側が「入力」です。例えば、ブルーレイレコーダーやゲーム機は映像と音声の信号を送り出すので、これらの機器に付いているのは「HDMI出力端子」となります。一方で、テレビやプロジェクターは信号を受け取って映像を映し出すため、「HDMI入力端子」を備えています。
したがって、基本的な接続は「機器の出力端子」から「テレビの入力端子」へとHDMIケーブルをつなぐ形になります。サウンドバーは少し特殊で、製品によっては入力端子と出力端子の両方を持っている場合があります。これは、ブルーレイレコーダーからの信号を一度サウンドバーで受け取り(入力)、音声だけを処理して、映像信号はテレビへ送り出す(出力)という使い方をするためです。この仕組みが、後述するパススルー機能にも関連してきます。
この基本をまず押さえておけば、接続のトラブルを大幅に減らすことが可能です。
音声伝送に必須のHDMI ARCとは

HDMIの接続を調べていると、必ず目にするのが「ARC」という言葉です。ARCは「オーディオ・リターン・チャンネル」の略で、HDMIケーブルを通じて音声信号を双方向にやり取りするための機能です。
本来、HDMIケーブルは出力機器から入力機器への一方通行の信号伝送が基本でした。しかし、ARCに対応したHDMI端子同士を接続することで、テレビ側からサウンドバーへと音声信号を送り返すことが可能になります。
なぜなら、テレビで視聴するコンテンツは、必ずしも外部の再生機器からだけとは限らないからです。例えば、テレビに内蔵されたチューナーでの地上波放送や、テレビのアプリで視聴するネット動画の音声をサウンドバーから出したい場合、テレビからサウンドバーへ音声を送る必要があります。ARCがなければ、このために別途「光デジタルケーブル」などを用意する必要がありました。しかしARC機能があれば、テレビとサウンドバーをつなぐHDMIケーブル1本で、映像と音声のやり取りが完結します。
最近では、より高品質な音声フォーマットに対応した「eARC(エンハンスド・オーディオ・リターン・チャンネル)」という規格も普及しています。eARCは、Dolby Atmosのような立体音響の伝送も可能にするため、映画や音楽をより高音質で楽しみたい方にとっては、このeARCへの対応も機器選びのポイントになります。
Dolby Atmosでホームシアターを作る場合はこちらの記事を参考にしてください。
家でも出来るドルビー アトモス ホームシアターの完全構築ガイド
基本的なサウンドバーのHDMI接続方法

サウンドバーをHDMIで接続する場合、主に2つのパターンが考えられます。どちらの接続方法を選ぶかは、お持ちのサウンドバーやテレビの端子の数、そして接続したい外部機器の数によって変わってきます。
1. 外部機器をサウンドバーに接続するパターン
これは、サウンドバーにHDMI入力端子が複数ある場合に有効な方法です。接続の順番は「ブルーレイレコーダーやゲーム機」→「サウンドバーのHDMI入力」→「サウンドバーのHDMI出力(ARC対応)」→「テレビのHDMI入力(ARC対応)」となります。
この方法のメリットは、音声信号がテレビを経由しないため、劣化の少ない高音質なサウンドを直接サウンドバーで再生できる点です。特に、eARCでDolby Atmosなどの高音質フォーマットを楽しみたい場合に最適な接続方法と考えられます。ただし、サウンドバーのHDMI入力端子の数以上に外部機器を接続することはできません。
2. 外部機器をテレビに接続するパターン
サウンドバーにHDMI入力端子が1つしかない、または入力端子がない場合に用いる方法です。この場合、全ての外部機器はテレビのHDMI入力端子に接続します。そして、「テレビのHDMI出力(ARC対応)」と「サウンドバーのHDMI入力(ARC対応)」を1本のケーブルでつなぎます。
こうすることで、テレビに接続された全ての機器の音声と、テレビ自身の音声がARC機能によってサウンドバーへ送られます。配線がシンプルになるというメリットがありますが、注意点もあります。それは、テレビ側が再生したい音声フォーマットのパススルー(通過)に対応している必要があることです。もしテレビが対応していなければ、せっかくの高品質な音声がダウングレードされてしまう可能性があります。
テレビのHDMIが2つの場合の問題点

最近のテレビでも、エントリーモデルや小型のモデルではHDMI入力端子が2つしか搭載されていないケースが珍しくありません。この「HDMIが2つ」という状況が、サウンドバーを導入する際に問題を引き起こすことがあります。
具体例を挙げてみましょう。まず、テレビのHDMI端子のうち1つは、ARC機能を使うためにサウンドバーとの接続で埋まってしまいます。そして、もう1つのHDMI端子には、普段から使っているブルーレイレコーダーを接続したとします。これで、テレビのHDMI端子は2つとも使用中になりました。
ここで、「新しくゲーム機を購入したので接続したい」となった場合、どうなるでしょうか。テレビに空いているHDMI端子はありません。ブルーレイレコーダーのケーブルを抜き、代わりにゲーム機のケーブルを挿すという手間が発生します。これでは非常に不便であり、ケーブルや端子の劣化にもつながりかねません。
このように、テレビのHDMI端子が2つしかない環境では、サウンドバーを導入した時点で、他に接続できる外部機器が1台に限定されてしまうという問題が発生しやすいのです。これが「サウンドバーを導入したらHDMIが足りなくなった」と感じる典型的なパターンの一つです。
サウンドバーのHDMIが1つしかない時は?

サウンドバーの中には、コストを抑えるためやデザインをシンプルにするために、HDMI端子を1つ(主にARC/eARC対応の出力端子)しか搭載していないモデルも多く存在します。このようなサウンドバーを選ぶ際には、いくつか注意すべき点があります。
最も大きなポイントは、このタイプのサウンドバーには外部機器を直接接続するためのHDMI「入力」端子がない、ということです。前述の通り、接続方法は必然的に「全ての外部機器をテレビに接続し、テレビからARCで音声をサウンドバーに送る」という形に限定されます。
この接続方法自体に問題はありませんが、音質にこだわる場合はテレビの性能が鍵となります。ブルーレイレコーダーや最新のゲーム機が出力する「Dolby TrueHD」や「DTS-HD Master Audio」といった高音質なロスレスオーディオフォーマットをサウンドバーで楽しむには、テレビがその音声信号をそのままサウンドバーに渡す「パススルー」機能に対応している必要があります。
もしテレビがパススルーに対応していない場合、音声信号はテレビ内部で汎用的なフォーマット(Dolby Digitalなど)に変換されてからサウンドバーに送られます。これにより、本来の音質よりも劣化してしまう可能性があるのです。
サウンドバーにHDMIが1つしかないモデルを選ぶ際は、利便性と引き換えに、音質がテレビの性能に依存するという点を理解しておくことが大切です。
サウンド バーでHDMIが足りない時の解決策
この章で解説する項目
- HDMI分配器で接続ポートを増やす
- 分配器の自動切替と手動切替の違い
- HDMIパススルー機能を活用する方法
- HDMIが2入力あるサウンドバーも選択肢
- サウンド バーでHDMIが足りない時の総まとめ
HDMI分配器で接続ポートを増やす

テレビやサウンドバーのHDMI端子が足りない問題を解決する最も手軽で一般的な方法が、「HDMI切替器(セレクター)」を使用することです。しばしば「分配器」という言葉も使われますが、複数の機器からの入力を1つの出力にまとめるのが「切替器」、1つの機器からの入力を複数の画面に出力するのが「分配器」であり、このケースで必要なのは「切替器」です。
HDMI切替器は、複数のHDMI入力ポートと1つのHDMI出力ポートを備えた小型の装置です。例えば、3入力1出力の切替器があれば、ブルーレイレコーダー、ゲーム機、PCの3台を切替器の入力ポートに接続し、切替器の出力ポートからテレビやサウンドバーのHDMI入力ポートへケーブルを1本つなぐだけで済みます。
これにより、ケーブルを抜き差しする手間なく、リモコンや本体のボタン一つで接続する機器を切り替えられるようになります。価格も数千円から手に入るものが多く、非常にコストパフォーマンスの高い解決策と言えます。
ただし、製品を選ぶ際には注意が必要です。4K映像やHDR、eARCといった新しい規格に対応しているかを確認しないと、映像や音声の品質が低下する原因になります。自分の使いたい機器の性能に合わせて、切替器のスペックをしっかりと確認することが失敗しないためのポイントです。
分配器の自動切替と手動切替の違い

HDMI切替器には、主に「自動切替」機能を持つモデルと、「手動切替」のみのモデル、そして両方の機能を備えたモデルがあります。どちらが良いかは利用スタイルによって異なるため、それぞれのメリットとデメリットを理解して選ぶことが大切です。
切替方式 | メリット | デメリット | こんな人におすすめ |
---|---|---|---|
自動切替 | ・電源を入れた機器に自動で切り替わるため手間が少ない<br>・リモコン操作が不要な場面が多い | ・待機電力などで意図せず入力が切り替わることがある<br>・機器の相性によっては正常に動作しない場合がある | ・とにかく手軽さを重視したい人<br>・同時に複数の機器の電源を入れない人 |
手動切替 | ・自分の意思で確実に入力を切り替えられる<br>・意図しない切り替わりがなく安定して使用できる | ・切り替えの都度、本体ボタンかリモコン操作が必要<br>・リモコンをなくすと操作が不便になる | ・複数の機器を同時に起動しておくことが多い人<br>・安定した動作を最優先したい人 |
自動切替は、例えばゲーム機の電源を入れるだけでテレビの入力がゲーム機に切り替わるため非常に便利です。一方で、レコーダーが録画を開始した際の信号などを検知して、意図せず画面が切り替わってしまうという声も聞かれます。
これに対し、手動切替は確実性が魅力です。複数の機器の電源が入っていても、自分が使いたい機器をボタン一つで選択できます。多くの製品には専用のリモコンが付属しているため、操作も簡単です。
最近では、自動切替機能をオン・オフできる製品も増えています。どちらの機能も試してみたいという方は、両対応のモデルを選ぶと良いでしょう。
HDMIパススルー機能を活用する方法

HDMIパススルーとは、映像と音声の信号をそのまま通過させる機能を指します。サウンドバーにおけるパススルーは、外部機器(例:PS5)から受け取ったHDMI信号から、音声信号だけを取り出して処理し、映像信号はそのままテレビへと受け流す仕組みのことです。
この機能は、特に高画質・高音質を求める場合に重要となります。なぜなら、音声信号をテレビを経由させずに、直接サウンドバーで処理できるからです。これにより、テレビの性能に依存することなく、Dolby Atmosのような高品質な音声フォーマットを劣化させずに楽しむことが可能になります。
ただし、パススルー機能を活用する上で非常に重要な注意点があります。それは、サウンドバーのパススルー性能が、接続する機器の性能を全てカバーできているか、という点です。例えば、PS5は「4K/120Hz」や「VRR」といった最新の映像規格に対応していますが、もしサウンドバーのパススルー性能が「4K/60Hz」までだった場合、サウンドバーがボトルネックとなり、PS5の性能を最大限に引き出すことができなくなります。映像は4K/60Hzに制限されてしまうのです。
この問題を回避するためには、PS5のような高性能な機器はテレビのHDMI入力に直接接続し、音声はテレビのeARC機能を使ってサウンドバーに送るという方法が有効です。自分の持っている機器のスペックを正しく把握し、どこに接続すれば性能を最大限に活かせるかを見極めることが鍵となります。
HDMIが2入力あるサウンドバーも選択肢

これまでHDMI端子が足りなくなった場合の対処法として切替器などを紹介してきましたが、これからサウンドバーを購入する段階であれば、根本的な解決策として「HDMI入力端子を複数持つサウンドバー」を選ぶという選択肢があります。
ミドルクラス以上のサウンドバーには、HDMI入力端子が2つ以上搭載されているモデルが多くあります。例えばHDMI入力が2つあれば、1つにブルーレイレコーダー、もう1つにゲーム機を接続し、サウンドバーのHDMI出力(eARC)をテレビに接続するだけで、スマートなAV環境が完成します。
この方法の最大のメリットは、HDMI切替器を別途購入する必要がないことです。これにより、設置スペースがすっきりし、余計な配線や電源アダプターを増やすこともありません。また、機器間の相性問題を心配する必要が減り、信号の劣化リスクも最小限に抑えられます。
もちろん、入力端子が多いモデルは、端子が1つしかないエントリーモデルに比べて価格が高くなる傾向があります。しかし、将来的に接続したい機器が増える可能性があることや、HDMI切替器を後から購入する費用と手間を考慮すると、最初から入力端子の多いモデルに投資する価値は十分にあると考えられます。自分の使い方をよくシミュレーションし、必要な入力数を満たす製品を選ぶことが、長期的に見て満足度の高い選択につながります。
サウンド バーでhdmiが足りない時の総まとめ
- サウンドバーでHDMIが足りない問題は多くの人が直面する
- 原因はテレビやサウンドバーの端子不足がほとんど
- まずはHDMIの入力と出力の基本を理解することがスタートライン
- 入力は信号を受け取る側でテレビなどが該当する
- 出力は信号を送り出す側でレコーダーやゲーム機が該当する
- ARC機能はテレビの音声をサウンドバーに送るための重要な機能
- eARCはDolby Atmosなどの高音質音声に対応する
- テレビのHDMIが2つしかないとサウンドバー接続で埋まりがち
- サウンドバーのHDMIが1つしかない場合は音質がテレビ性能に依存する
- 最も手軽な解決策はHDMI切替器の導入
- HDMI切替器には自動切替と手動切替のタイプがある
- 自動切替は便利だが意図しない動作をすることもある
- 手動切替は確実性が高く安定した利用が可能
- パススルー機能は高音質再生に有利だが映像規格の確認が必須
- これから購入するならHDMI入力が2つ以上あるモデルも検討しよう